ホタルが飛び交うビオトープに必要なものとは?
新興住宅地の我が家で、ホタルが飛び交う庭づくりを目指しています。
残念ながら、まだ飛んでいませんが、これまで研究した成果(?)をここにまとめます。
ホタルを飛ばそうを最初に思ったのは、クリスマスの電飾が気になりだしたことが発端です。
季節は違うのですが、クリスマスが近づくと電飾を飾っている家が近所に増えてきます。なんであんなパチンコ屋のような電飾を家に取り付けるのでしょうか?冬は星がとてもきれいなのに、きれいな星が見えにくくなるのです。
しかも、これらの電飾は、家の中から見えないことがほとんどです。家の中でやった方がいいと思いますが、外を出歩く人が少ない冬になにやってるんでしょうかね?
こうしたパチンコ屋のような電飾に対抗したいわけではありませんが、電飾より遥かにきれいなホタルが飛び交う庭を作りたいと思いました。
といっても、いまだホタルは飛んていません。いろいろやってみると、思わぬ課題も多くて先が長いことが分かってきました。
ホタルが育つビオトープ
ホタルは水辺の草に卵を産み付けられた後、幼虫は水中で育ち、水辺の地中で蛹になります。そして、成虫になると夜空を漂うのです。
草、水中、地中、空という4つの環境を整備しないとホタルが飛び交う庭を作ることができません。
この環境を庭で実行するには非常にレベルが高いのです。
まとめると、以下のような条件があります。
- 水質が良好である
- 産卵できる苔(コケ)がある
- 水辺に土がある
- 暗い環境である
- 幼虫の餌となるカワニナ(巻き貝)が生息している
簡単にできることと、難しいことがあります。
一つ一つ課題を克服してホタルを飛ばしてみたいと思っています。
幼虫の生育に必要な水質レベル
ホタルはきれいな小川にいるとしたもんです。私は昔からそういうイメージを持っていました。
私は新興住宅地に育ったこともあり、子どもの頃からホタルを見たことがなかったのです。ホタルは、ものすごいきれいな小川でしか生息していないと思っていました。
大人になってから仕事の関係で、ホタル系のプロ(仕事でビオトープを作っている人)にたまたまお会いできたことがありました。せっかくなので、勉強がてら聞いてみました。
そのプロは、このようなことを言ってました。
ホタルは日本の在来種なので、水質も含めて環境はそこそこに整えればよい。
ホタルがいなくなった一番の原因は、土の川岸がコンクリート化されたこと。
ホタルは強いので環境さえ整えば育つ。
この話を聞いてから、ホタルを庭で飛ばしてやろうと思ったのです。
確かにそのとおりのような気がしてきます。
都市化が進んでいるところでも、ちょっと離れた田んぼに行けばホタルが飛んでいたりするのです。今どきの田んぼは農薬などもたくさん使っていそうですから、水質も昔ほど良くないかもしれません。そう考えると、水質はそこそこでいいような気がしてきます。
水質だけの問題ではないかもしれませんが、例えば、オオサンショウウオが生息しているレベルよりは遥かに低いレベルでホタルが生息していることは事実です。
私の結論としては、メダカが繁殖できる水質なら問題ないのではないかというものです。実際、その程度の環境でホタルが育っているように思います。
水を循環させる
ビオトープの水質を管理するには、水を循環させて浄化するしかありません。
実際、水を循環させて浄化させるというプロセスは、自然の川と同じ浄化プロセスを狭い範囲で短時間に行っているに過ぎません。
水は循環させさえすれば、微生物が水をきれいにしてくれます。
いろいろ調べてみると、ホタルの生育には、ビオトープの一部に小川のような流れがあったほうが、いいようです。ホタルを飛ばすためには、池を作るというよりも小川を作るイメージの方が適しているようです。
水量を増やす
水量が多いほど、水質が安定することは間違いないので、できる限り大きいビオトープを作りたいです。
といっても、庭に作るとなると敷地の問題もあって難しいですね。
そうなると、水量を増やすためには、できるだけ深く掘るしかありません。
骨が折れますが、頑張りましょう!
木陰を作る
水温が上がると水質は悪化しやすくなります。微生物による浄化が追いつかないからです。水温が上がらないようにするためには、できる限りビオトープに陰を作ってやる必要があります。
まったく陽の差さないビオトープは、水草などの生育が悪いのですが、庭のビオトープの場合は、日差しはできる限り減らした方が水質的には良くなると思います。
水温を上げないためには、ビオトープに木陰を作ってやることがいいですね。
産卵するために必要な苔(コケ)
ホタルが産卵するのは、苔(コケ)の上と言われていますが、これは適度な湿度が保たれた草であれば苔(コケ)でなくても問題ないと思われます。
逆に言えば、適度な湿度が保たれているところに苔(コケ)が生えます。苔(コケ)が生えないようなところでは、産卵は期待できないでしょう。
ホタルの卵は、苔(コケ)に産み付けられて、孵化すると水に落ちます。羽化した幼虫はその後水中で育ちます。
そのため、水辺に落っこちる位置に苔(コケ)があることがベストなんですね。
苔(コケ)の種類は特になんでもいい感じのようです。実際、ホタルが飛び交う田んぼに、苔(コケ)はそこまで多く生えていないと思います。田んぼは、日当たりがいいから当然です。ホタルは200m程度しか移動しないとのことです。これらのホタルはどこで生まれたのでしょうか?
つまり、苔(コケ)に産み付けられていないと思うのです。苔(コケ)の代わりの水辺の草に産み付けられているのでしょう。
ホタルにとって、苔(コケ)がベストということは分かりますが、そこまで徹底する必要はないというスタンスでやっています。それなりの草がビオトープの周りに生えていたら問題ないでしょう。
といっても、人にとって苔(コケ)は見た目にきれいです。日光が降り注いでいなければ、苔(コケ)は増えますので、苔(コケ)も植えてみましょう。
木陰を作る
水温を上げないために木陰を作る必要がありますが、苔(コケ)の生育には木漏れ日程度がベストのようです。
これは苔(コケ)の種類にもよりますが、実体験で感じます。
蛹になるために必要な水辺の土
ホタルの幼虫が蛹になるために必要な場所が水辺の土です。
ホタルの幼虫は、春になると水中から出てきて土の中で蛹になります。土は湿っていなければならないようです。田んぼでホタルが育っているので、田んぼの土手のレベルの土であれば問題ないと思います。適度な湿り気さえあればいいようですね。
それを考えて、上の写真の右上あたりに上陸できるところを土にしたのですが、現在は、時が経ち草が生い茂ってしまい蛹になれるような状態ではなくなっています。
春に蛹を受け入れるための環境は、冬の間に準備することが必要です。
場合によっては、アリに食べられるということもあるようです。そこまで面倒は見きれないですが、そこそこ注意はしたいです。
木陰を作る
蛹になるための土も日陰にしないとすぐに乾いてしまいます。乾くと蛹も死んでしまいます。
木陰は蛹にとっても重要です。
ホタルの生育に必要な暗い環境
ホタルに限らず複眼の昆虫は一般的に目が悪いらしいのです。
少なくともホタルは、自発光した弱い光を頼りにオスやメスを探しているのです。目が悪いから光っているのかもしれません。外灯などの余計な光があればホタルの僅かな光など見えなくなってしまい、繁殖活動にも影響を与えてしまいます。
また、幼虫が蛹になるために上陸するのは、雨の日が多いらしいです。雨ということは、周りが暗いということです。他の光があると蛹化することまで阻害することになるのです。
さらに、人間も含めて生き物の体内時計は、光を基準に調整されています。ほのかな光だけを頼りにしているホタルは、人間以上に光に敏感です。体内時計がおかしくなるとホタルの成長も阻害することになるのです。
庭でホタルを飛ばすためには、できる限り外灯などの光を制限する必要があります。
光については、人間とホタルの共存は難しいと思いますが、なんとか両立させたいものです。
木陰を作る
できれば外灯を消してほしいですね。でも、住宅地ではなかなかそうもいきません。外光を遮断するためには、木陰でなくてもいいのですが、何かしらで光を遮断する必要があります。庭で光を遮断するには樹木が一番ですね。
結局、ここでも木陰の重要性を再認識しました。
幼虫の餌となるカワニナ(巻き貝)の生育条件
池などで生き物採集をしたことがある人は、見たことがあると思います。カワニナは細長い巻き貝です。
網で掬えば、何個か入っていることがあります。わざわざ捕りに行くほどのものではない獲物です。
この巻き貝がホタルの餌になるのです。
最初は、こんな簡単に捕れるものであれば、ホタル飼育の道もゴールが見えたと思いました。
カワニナはほったらかしていても、水中に生えている藻などを食べているので、飼育上の問題は特にないと思いました。
しかし、そんなに簡単にはいきません。カワニナの生育温度が大きな課題なのです。カワニナは、水温30℃を超えると死んでしまうようです。私にとってはこれが最大の障壁になっています。未だに克服できていません。
ビオトープという小さな閉鎖水域の環境では、水温の上昇を抑えることが難しいのです。カワニナを捕ってきてはビオトープに放り込みますが、夏の盛りになると気がつけばカワニナが消えています。
実際のところ、ホタルの幼虫は水温30℃を超えても死ぬことはないようです。そう、ホタルは強いのです。しかし、餌となるカワニナが耐えられない。そのため、ホタルも餌がなくなって死ぬという流れになります。弱いのはカワニナです。
木陰を作る
カワニナの生育環境を整えるには、結局水温さえ整えたら問題ありません。
水温を下げるためには、陰を作るしかありません。そのためには、結局木陰がベストです。
木陰を作ることはすべてに共通して必要なこと
ということで、ホタルが飛び交う庭を目指すためには、カワニナが繁殖するビオトープ作りがその第一歩になります。
そのためには、水温を下げることが目標です。ビオトープの水温を下げるために「たてず」で陰を作ったりしてみましたが、見た目も悪いというよりビオトープが見えなくなります。何をやっているか分からなくなります。
ここまで何度も木陰の必要性について書いてきましたが、結局のところ、ビオトープの周りに木を植えて日陰を作ってやることが一番いいと思っています。
卵のために苔(コケ)を育てるためにも、幼虫のために水質を高めるためにも、幼虫の餌のカワニナのために水温を上げないようにするためにも、蛹のために土が乾かないようにするためにも、成虫のために外光を抑制するためにもすすべて木陰が必要なのです。
これに気づいた頃は、子どもがまだ小さかったことで、子どもが集団でビオトープを襲ってくる事件もあり、ホタルが飛ぶビオトープを目指すのは、子どもが大きくなるまで待とうと思いました。木陰は1年で作ることもできませんから。
そのため、まだまだ先は長い・・・という結論に至っているわけです。
まとめ
ホタルが飛び交うビオトープを庭に作るために必要なことをまとめたレポートはいかがだったでしょうか。
庭でホタルを飛ばすために始めたプロジェクトですが、ホタルを育てるためには、様々な条件が必要なことが分かりました。なかでも、ホタルの幼虫の餌となるカワニナが高温に弱いことが最大の課題ということが分かりました。
ビオトープの水温を30度以下に抑えられない限り、庭でホタルを飛ばすことはできません。近年は温暖化のために外気温は上がっていく一方です。水温も上がるに決まっています。
なんとか、水温を上がらないようにするために、そろそろテコ入れしていこうと思っています。